ハルミは跳び箱が苦手だった
小さいころから運動はとっても苦手で、
みんなどうやって鉄棒をクルクル回っているのかな、
縄跳びでどうやって飛ぶ瞬間を見極めているのかな、
みんなどうやって鉄棒をクルクル回っているのかな、
縄跳びでどうやって飛ぶ瞬間を見極めているのかな、
いつも考えてはわからず難なくできている友達が不思議で仕方なかった
逆上がりは人生で一度も成功したことがないし、
ボールを片手で投げられなくてドッジボールが嫌いだった
ボールを片手で投げられなくてドッジボールが嫌いだった
だから体育の時間が憂鬱で、
いつもどうやって体育をさぼろうかとそんなことばかり考えていたし、
実際、小学一年生の頃から体育の時間になると行方不明になることが多かった
いつもどうやって体育をさぼろうかとそんなことばかり考えていたし、
実際、小学一年生の頃から体育の時間になると行方不明になることが多かった
小学校の3年生くらいになると、
跳び箱の時間が増えて、
最初は4段、飛べたら5段、 6段と積み重なる箱の数が増えて高さも増す
跳び箱の時間が増えて、
最初は4段、飛べたら5段、
周りのみんなは、跳び箱の近くまで走っていき、ポンと両足で飛んで、跳び箱の上に両手をつき、足を広げている。
ハルミにはその一連の動作を自分の身体で再現することがとっても 難しかった
いつ、両足で飛んで
いつ、両手をついて
いつ、足をまえにやっているの?
いつ、両手をついて
いつ、足をまえにやっているの?
いつ、両手を離すの?
誰もその答えをくれなく頭の中のシミュレーションがうまくできず 困っていた
4段はポンと飛ばなくても跳び箱を超えられそうだったけど、
お尻が残って向こう側に行く前に跳び箱に座ってしまう
お尻が残って向こう側に行く前に跳び箱に座ってしまう
4段を飛べないと5段にいけない
5段にいきたいわけじゃない
5段にいきたいわけじゃない
ただみんなのように飛んでいる快感を味わってみたかった
跳び箱が飛べなくて飛べるようになるまで体育館にひとり残らされるのはちっとも構わなかったけれど、時々先生は残酷なことを提案してハルミを静かに苦しめていた
班で全員飛べなければ、全員先に進めない
ハルミが同じ班にいることで、飛べる人も先に進めなくなっている
みんなの視線が痛かった
そんなハルミを周りは必死に応援した
「大丈夫!怖くないから!」
「飛べる!つぎは飛べるよ!」
「飛べる!つぎは飛べるよ!」
大きな声でハルミに「がんばれ!」と言い続ける
それがハルミにはつらかったし、恥ずかしかった
むしろいないものとして扱ってほしい、消えてしまいたい
応援よりむしろ教えてほしかった
応援よりむしろ教えてほしかった
どうやって手を出しているの?
どうやって両足で飛んで飛び越えているの?
どうやって両足で飛んで飛び越えているの?
だけど結局ハルミはその疑問を払拭することなく大人になった
一度も跳び箱は飛べずに人生は終わりそうだけど、
跳び箱が飛べなくて困っていたあの小学校の体育館に比べたら今はなんて呼吸がしやすいのだろう
跳び箱が飛べなくて困っていたあの小学校の体育館に比べたら今はなんて呼吸がしやすいのだろう
「あんなの飛べなくても私は困ったことがないわ」
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